下水道には、汚水と雨水を同一の管渠で流す合流式と、汚水と雨水を別々の管渠で流す分流式の2種類があります。主要都市では合流式が多く、また1970年代以降に作られた下水道では分流式がほとんどです。分流式では雨水と汚水は別々の管渠なので、本来汚水管に雨水が流入することはありません。しかし、下水道管の老朽化によるひび割れから地下水が浸入したり、あるいは家庭の雨樋からの水が雨水管ではなく間違って汚水管に接続されることによって、雨水が汚水管に流入します。これを雨天時浸入水と呼びますが、これは降雨後に発生し、その流入箇所を特定することが困難なため、不明水とも呼ばれます。通常の汚水とは違い、この雨天時浸入水には課金することができないため、全国の自治体の負担は年間104億円に達し、自治体による下水道運営を圧迫しています。
従来は雨天時浸入水の流入箇所の特定のために、マンホールを降りて下水道管の中に流量計を設置して、降雨後に汚水管の水量が増えるかどうかで雨天時浸入水の有無を調べていました。しかし、流量計の設置は手間がかかり高価なため、自治体の限られた予算では十分な箇所の調査が行えないのが現状でした。これに対し、市販のICレコーダをマンホール蓋のすぐ下に地上から設置してマンホール内の音響を採取し、その音響をAI解析することによって雨天時浸入水の有無を検知する安価な方法が産総研と(株)建設技術研究所によって開発されました。
図:不明水検知方法の比較
これに加え、国交省B-DASHプロジェクトでの検証を経て、2021年4月にガイドライン化されました。弊社はこのAI音響解析によって雨天時浸入水の有無を検知するサービスを2020年8月から開始しています。
写真:工事風景と音響取得装置